コミュニケーションデザイン専攻

デジタルデザイン論レポート

G12050 私のデジタルデザイン手法

クラウドファンディングとは、ある「志」を持った人や団体に対する資金を、ネットを通じて多数の支援者から収集し実現する手法。
ここでのクラウドは「群集 (Crowd)」ファンディングは「資金調達(funding)」という意味。(Crowd Funding)
チャリティーやファンドレイジングなど社会公益のためにしか使えない手段ではない

クラウドファンディングには種類があって

1「寄付型」 : リターンを一切求めないタイプ
提供者に見返りなし

2「購入型」 : 金銭以外のリターンがあるタイプ
作品やイベント招待など

3「投資型」 : 金銭的リターンを想定するタイプ
事業が成功すれば、お金としてリターンがある



米国でいわゆるJOBS ACTが成立した2012年3月以降、世界のベンチャー業界ではエクイティをベースとしたクラウドファンディングのトピックがよく取り上げられるようになりました(JOBS ACTについてはこちらをご覧ください。また、プレゼン資料をこちらにアップしています。)。

2012年末に出るといわれていた施行ルールが遅れていることもあって、米国でもJOBS ACTに基づくエクイティクラウドファンディングサービスは、この記事の執筆時点では正式な形ではローンチしていません。けれども、英国では監督当局であるFCAの認可を得たサービス事業者による展開が既に行われているなど、世界的にこうしたサービス形態が注目を浴びる流れができており、こうした動きは2013年以降の資金調達のトレンドにとって無視できないものとなりつつあります。

成長企業に対する資金調達に携わっている立場として、管理人自身も、事業者の方々はもちろん、金融庁シンクタンク、他のメディアや有識者の方々から、エクイティ・クラウドファンディングについて意見を求められる機会も増えてきており、こうしたトレンドの日本での広がりを日々感じております。

こうした点をふまえて、今回は、エクイティ・クラウドファンディングについて、現時点での議論の簡単な整理をしてみたいと思います。

寄附型、購入型、投資型といった、クラウドファンディング一般のソーシャルファイナンスという金融の文脈から見た議論の整理については、こちらのプレゼン資料をご覧いただければと思います。特に、クラウドファンディングが、先進国型のソーシャルファイナンスの一類型として、SNSなどにより作られたソーシャルネットワークを基盤として行われる、資金需要者の信用情報の創造活動に依拠したサービスであること、投資者による資金拠出の動機は、必ずしも収益性などの経済合理性に基づくものではなく、資金需要者の活動に対する共感に基づくものでありうること、は重要であると考えています。そしてこれらは、対価がエクイティという形を取ったとしても、軽視されるべきではない特徴であると考えられます。


バズワードとなってしまった言葉にしばしば見られるように、エクイティ・クラウドファンディングという言葉についても、人によって指すものが相当異なるという状況になっています。たとえば、「多数の投資家から少額ずつ資金を集める」というのは、まさにこれまで株式市場が担っていた役割にほかならず、パブリックオファリングというのは、クラウド(大衆)に対して株式(エクイティ)を用いて資金を調達する活動です。また、株式以外の形(集団投資スキームなど)で有価証券投資以外の資金を調達する仕組みは、これまでにも日本に存在しています。

エクイティをベースとしたクラウドファンディングサービスの例として、現在日本では、いわゆる「ソーシャルレンディング」と呼ばれているサービスと、資金需要者自身が組成する匿名組合出資などの集団投資スキームの組成を手伝うサービスがあります。「ソーシャルレンディング」は、資金需要者に対しては貸付を行っているものの、その原資を集める方法は匿名組合出資などの集団投資スキームによって行われていますので、これらもエクイティをベースとしたクラウドファンディングの一つとして位置づけられます。

上記の法規制上の論点のほかに、株式形態のクラウドファンディングについては、実務上の工夫が必要なポイントがいくつかあるといわれていますので、これについて簡単に触れておきます。

第1に、株式の議決権をどうするかという問題があります。

クラウドに株式を取得させるということは、当たり前のことですが、多数の個人株主を抱えるということを意味します。普通株式には通常株主総会の議決権が付されています。また、その他にも、少数株主には株主としていくつかの権利が会社法によって与えられています。

特に議決権というのは、単に株主総会で賛否を表するということにとどまらず、その集積は会社の支配権を意味します。株主管理コストの問題や会社支配権の源泉となる株式を管理が困難なクラウド投資者に渡してしまうことの是非が問題となるわけです。

この点、海外のサービスの中には、クラウドにオファーする無議決権株式(普通株式から議決権を取り除いたもの)を作り、その取得を希望する投資者を募るという方法がとられているものもあります。

第2に、バリュエーションをどうするかという問題があります。

エクイティクラウドファンディングの対象企業は未公開企業であるため、上場会社と同様の意味での市場価格というものは存在しません。そうした中で、投資者に対して1株いくらで株式を発行することにするのか、その決め方が実務上問題となりえます。

この点も色々な解決策があり得ますが、海外のサービスを見てみると、目標投資額と募集する株式の割合を示した上で、目標に到達すると締め切るものや、目標額を超えて申し込みがある場合の柔軟性を確保しておくタイプのものがあるようです。

第3に、良質な案件を供給するための仕組みとして、目利きであるプロフェッショナルをクラウドファンディングにどのように関与させるか、という問題があります。

これはクラウドファンディングとVCなどの専門投資家の役割分担論の一つとして捉えられるかと思います。基本的な方向性としては、VCなどの専門投資家の目利き力をクラウドファンディングでいかに活用するか、という方向で議論されていますが、VCなどの専門投資家がこうした仕組みに参加するインセンティブがどこにあるのかということを考えると、仕組みとしてビルトインするためにはそれなりの工夫が必要であるように思います